DNPでは、さまざまな印刷技術の開発を行うほか、近年はVR技術の活用にも力を入れています。
東京藝術大学 共創拠点推進機構の参画企業ということで、ご縁があり今回の訪問が実現しました。

今回は「みどころウォーク」を体験させていただきました。

みどころウォークとは、ヘッドマウントディスプレイを装着した利用者が、手すりをたどりながら実際に移動することでVR空間内を動き回ることができる鑑賞システムです。

参考:https://www.dnp.co.jp/biz/products/detail/20172729_4986.html#anchor009

体験スペースには、4mほどの手すりと、その両端から一歩離れた位置にポールが立っています。みどころウォークでは、この現実空間の手すりとポールをたどることで、VR空間を移動し空間的な鑑賞体験が可能だそうです。

今回はフランスの文化遺産「マザラン・ギャラリー」と、昨年藝大生と作成したVR空間の2つを体験します。

まずは「マザラン・ギャラリー」の体験から。手すりのそばに立ち、ヘッドマウントディスプレイを装着します。そこから見えるのは、長さ約45m、天井高約9mの広々とした回廊です。

©DNP Dai Nippon Printing Co., Ltd. 2024, with the courtesy of the Bibliothèque nationale de France.

上を見上げると、きらびやかな天井画が。手すりを伝って歩いてみましょう。

VR空間の中を、天井画を眺めながらゆっくり移動します。手すりの端まで来ると、VR空間上に螺旋階段が現れました。現実空間では、その位置にポールが立っています。VRの指示に従って、ポールを掴み、右回りに2周まわります。

視覚的には階段の段差が見えているのに、実際に歩いている地面は平面というギャップ。はじめは戸惑い、階段を上ろうと一歩踏み出したのに、思った場所に段がありません。意図せず背伸びあるきになってしまうような、不思議な感覚です。

2~3段分歩けばその感覚になれ、すたすた歩けるようになりました。階段をのぼりきると、VR空間では地上から2メートルの高さの廊下に到着。天井画に少し近づきました。

また手すりの端まで歩き、階段を上り、を数度繰り返すと、最上階地上6メートルほどの高さに。下を見下ろすと、大理石の床面に天井画がうっすら反射しています。VR空間の中では、手を伸ばせば触れるほど天井画がすぐそこに。間近でみると、かなり大きいことがわかります。VR空間であるとわかっていながらも、作品の近くに来ると思わず手を伸ばしてしまうものです。全体で2分程のお手軽な鑑賞体験でした。

続いて芸大生の作品。こちらは、もともと人が着用する着ぐるみとして藝大生が制作した作品をVR空間に配置、高さ15メートルほどに巨大化したものだそうです。

「マザラン・ギャラリー」のみどころウォークと同様に、手すりとポールをつたって、徐々に上段へ移動していきます。今回は6分程かけて高さ14メートルほどの位置まで登ってきました。下を見下ろすと、出発地点が小さくみえ、かなりの高さであることを感じます。

横山さん、佐藤さんもそれぞれ時間をかけてみどころウォークを体験しました。

具体的なことはまだ未定ですが、みどころウォークを護岸アーカイブプロジェクトに応用できたらと、アーティストと事務局内で検討中です。普段は立ち入れない護岸の上をVR空間上で歩いてみたり、足の不自由な方など身体的に護岸に行きづらい方でも護岸を歩く体験ができたりと、様々な人にひらかれたアーカイブになるかもしれません。


text: Hatsune Yagi