「護岸アーカイブプロジェクト—埋立地の記憶を保存する—(Seawall Archive Project)」


二度にわたる埋め立てによって現在のかたちとなった浦安市。第一期埋立護岸は海岸の保全を役割としていましたが、第二期埋立事業により陸地が広がりその役割を終えました。東日本大震災の際に護岸がダメージを受けたことで緑道化の案も進んでいます。

護岸アーカイブプロジェクトとは、浦安市の将来に向けてその護岸の記憶を残していくために、その歴史、かたち、感触、また護岸について考えたことを集め、誰でもアクセスできる記録に整えていくことを目指します。

アーカイブとは、「集める」、「引用する」、「似た物を揃える」、「ならべる」、といった方法を使って、物があったことや、体験などを保存することを言います。アートの現場では、様々なアーカイブへの取り組みが模索されてきました。2020 年からのコロナ禍からは、実物から離れ、アーカイブしたものを鑑賞する体験が増えていきました。

過去の埋め立て事業の際にできた第一期埋立護岸は今ではその役割を終え、浦安市の歴史を語るものとして残っています。この埋立護岸をまちの記憶としてどのように伝えていくかについて、アーティストと一緒に手を動かしながら考えていきます。


【ワークショップ概要】

ワークショップでは、アーカイブの中の「集める」工程を行い、埋立護岸壁面の型紙を制作します。

初回の8月18日(日)は入船中学校にて開催されました。
ワークショップでは、そもそも護岸の歴史とは?大きさは?触り心地は?など、護岸と向き合ってみることからはじめます。また、第一期埋立護岸が写っている思い出の写真も募集しました。


第2回の11月3日(日)は、入船まちづくり活動プラザの体育館に集合し、入船4丁目にある護岸の曲がり角で、型取りをしました。都市計画課の職員の方々も一緒に型取りを行いました。


第3回は同日午後に、高洲北小学校の体育館に集合し、今川2丁目、3丁目のあたりの護岸を型取りしました。浦安市PR大使でもある棋士の三枚堂達也さんにもご参加いただきました。

  • 日時:2024年11月3日(日) 14:30~16:45(14:15 受付開始)
  • 受付場所:高洲北小学校体育館 (千葉県浦安市高洲二丁目2番1号
  • 参加費:無料
  • 定員:定員20名程度

【展示】 

3回にわたるワークショップで型取りした、浦安市の土地の歴史を物語る「第一期埋立護岸」の型紙を、浦安公園に護岸型の小屋を立て展示しました。参加者とともにモノ、記憶、五感、対話などによって成された護岸のアーカイブを多くの市民の方に鑑賞していただきました。


VR体験会「護岸アーカイブプロジェクト—埋立地の記憶を保存する(Seawall Archive Project)—」

11月27日(水)(午前の部10:30-12:30、午後の部14:00-16:00を予定)に郷土博物館でVR体験会を開催しました。埋立護岸がある周辺の景色を見ながら、VR空間で護岸の上を歩くことができます。

「みどころウォーク」という、DNPが開発したVR空間を歩いて体験できるシステムを用いて、護岸の大きさを感じてもらいました。「みどころウォーク」は大きな物体や空間のサイズをリアルに感じられる点を特長にしています。
参考:https://www.dnp.co.jp/biz/products/detail/20172729_4986.html#anchor009

以前、市ヶ谷にあるDNP(大日本印刷株式会社)プラザに見学に行った時のレポートはこちらにあります。

  • 日時:2024年11月27日(水)
  • 会場:郷土博物館(千葉県浦安市猫実一丁目2番7号
  • 協力:DNP大日本印刷株式会社
  • 内容:埋立護岸がある周辺の景色を見ながら、VR空間で護岸の上を歩くことができます。

【アーティストのステートメント】

皆さんが集めてくれた護岸のかたち、感触、また、護岸について考えてもらったことを、アーカイブのプロセスに落とし込み、みんなが見られるようにしていくことで、浦安市の将来に向けて残していく活動をします。

護岸が、もし浦安市からなくなってしまった時、私たちは、その存在をずっと記憶しておくことが難しいです。人々の記憶から薄れていくなかで、自然と無かったことになってしまいます。浦安市が埋立地であることを可視化する、歴史的なランドマークであるということを、今回のワークショップを通して体験的に実感できることを目標としています。

これからの護岸について、皆さんで考える貴重な機会になれば幸いです。

佐藤桃子 横山渚

左から 横山渚、佐藤桃子

【ワークショップを担当するアーティスト】

横山渚

1997年千葉県浦安市出身。2024年東京藝術大学美術研究科先端藝術表現専攻修士課程修了。写真を主なマテリアルとして表現活動を行なっている。埋立地で育ち、東日本大震災の際に発生した液状化現象の被害にあった経験から、場所をつくることや、場所に干渉していくこと、場所をとらえ直すことについて関心を持っている。主なグループ展に、『KoMoro-Mori-More』(2024,小諸市内) 。2022年クマ財団支援クリエイター奨学金6期生に採択。


佐藤桃子

千葉県浦安市出身。東京藝術大学美術研究科先端藝術表現専攻修士課程を2024年に修了。幼少期から絵を描くことと何かを作ることが好きで、その延長で美術をやっています。大学ではペインティングから始まり、野外にオブジェクトを配置していくインスタレーションに移行したのち、現在は自身の身体を使い、パフォーマンスを行っています。人とコラボレーションしながら制作していくことにも興味があります。